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TATERU(タテル)の人員整理は本当にやむを得ないのか?

TATERU(タテル)では7月5日にIR情報として早期退職優遇制度を実施する旨を発表しました。

 

参考:早期退職優遇制度の実施について

 

一連の不祥事の影響で新規営業を停止していることで、経営状況に大きな影響が出ていると考えられます。

ただ、今回の早期退職優遇制度による人員整理はやむを得なかったこととして判断できるのでしょうか?

また、人員整理を行うということは、業績回復に奮闘していることが分かりますが、今後再起することは可能なのでしょうか?

今回は、TATERU(タテル)の早期退職優遇制度による人員整理の判断は正しかったのか、今後TATERU(タテル)は再起することが可能なのか、考察していきます。

TATERU(タテル)の早期退職優遇制度について気になっている方や、今後の展開・動向が気になるという方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

 

早期退職優遇制度は果たして合理的な判断なのか?

 

2019年7月5日、TATERU(タテル)から早期退職優遇制度の実施が発表されました。

TATERU(タテル)が実施した早期退職優遇制度は果たして合理的な判断と呼べるのでしょうか?

まずは、早期退職優遇制度について考察してみました。

 

早期退職優遇制度で販管費の削減が可能

7月5日に発表されたIR情報では、早期退職優遇制度を実施する理由として、“今後の持続的な成長に向けた構造改革を進め、収益性の改善を図り早期の業績回復を実現するための施策の一環”と、“従業員の多様なライフプランを支援するため”の2点を挙げています。

2018年8月末に発覚したデータ改ざん問題の影響で、現在アパートメント事業の営業活動を自粛しており、アパートメント事業だけで言えばほとんど管理費での収益しか出ていない状況だと推測されます。

営業活動を行っていないにも関わらず営業マンを多く抱えていては、販管費が負担となる一方です。

2018年12月31日時点の従業員数は381名在籍しており、セグメント別に見るとアパートメント事業の従業員数は337名います。

 

参考:有価証券報告書-第13期(平成30年1月1日-平成30年12月31日)

 

アパートメント事業にも様々な部署があるだろうと思いますが、管理部門は別に従業員数が記載されているため、恐らく大半は営業部かエンジニアとして働いているのではないかと考えられます。

新規営業を行っていないのにこれだけ営業マンを抱えているため、人員を削減していかないとコストばかりが掛かってしまい、いつまでも業績回復は難しいと言えるでしょう。

今回の早期退職優遇制度を活用すれば、人件費を含む販管費の削減が可能になるのです。

 

早期退職優遇制度で批判を受ける可能性は?

早期退職優遇制度を実施することで、社員や投資家から批判を受ける可能性はあるのでしょうか?

まず、早期退職優遇制度を改めて確認してみましょう。

早期退職優遇制度とは、早期退職希望者には会社側が元々設定していた退職制度よりも優遇された退職金などの条件を提示してもらえるというものです。

会社ごとに異なりますが、大体数ヶ月分の給与が退職金に上乗せされるケースが多く見られます。

TATERU(タテル)でも、2つの条件を提示していました。

 

 

TATERU(タテル)の場合、特別退職金の支給だけでなく再就職支援会社からのサポートを提供してもらえるよう、働きかけており、一般的な早期退職優遇制度の条件より良い条件となっています。

早期退職優遇制度はあくまでも働いている社員の意思に判断を委ねています。

人員整理の方法は早期退職優遇制度以外にも整理解雇などがありますが、整理解雇はいわば強制リストラであり合理的な理由と社会通念上相当だと判断されれば、労働者は勝手な身切りに遭ってしまうのです。

それに比べて早期退職優遇制度は、社員から退職の希望を募るため、社員の負担も比較的少ないと言えます。

さらに、そもそも退職したくない場合は希望しなければ良いだけの話です。

無理やり解雇させる整理解雇とは異なるため、社員から批判されることもないでしょう。

 

早期退職優遇制度は経営陣や株主、社員それぞれにメリットがある

TATERU(タテル)が今回実施した早期退職優遇制度は合理的な判断ができていると言えます。

その理由としては、経営陣や株主、社員それぞれにとってメリットがあるためです。

経営陣や株主にとってのメリットは、販管費削減により業績回復を目指せる点が挙げられます。

TATERU(タテル)の早期退職優遇制度では約160名を募集しており、もし160名の早期退職が決まればその分の人件費が浮くことになります。

有価証券報告書では平均年間給与が7,198,000円(2018年12月31日時点)と明記されており、単純計算で7,198,000円×160名=約11億5,000万円の販管費が削減されます。

特別退職金が特別損失に計上されたとしても、年間約11億5,000万円の販管費が削減されることになるので、業績回復も可能と考えられるでしょう。

業績が回復されれば経営も安定するので経営陣はもちろん、株主にも大きなメリットになると言えます。

 

有価証券報告書-第13期(平成30年1月1日-平成30年12月31日)

 

一方、社員にとってもメリットがあります。

それは特別退職金が支給されることと再就職支援を提供してもらえるためです。

金額が上乗せされる形で退職金がもらえ、なおかつ再就職をサポートしてもらえるため、場合によってはキャリアアップにつながる可能性や、異業種へのチャレンジも行えるでしょう。

双方にメリットがある早期退職優遇制度は合理的な判断だと言えるのです。

 

 

20188月に発覚した不祥事、経営陣や株主も一定の責任を負わされている

TATERU(タテル)の早期退職優遇制度は合理的な判断だと言えますが、人員整理を行うに至ったのは本当にやむを得なかったと言えるのでしょうか?

改ざんが発覚してから経営陣の対応を振り返り、人員整理までにどのような対応を行ってきたか確認してみましょう。

 

不祥事後のTATERU(タテル)の対応

データ改ざんが最初に発覚したのは、2018年8月31日の日本経済新聞電子版による報道です。

 

参考:アパート融資資料改ざん、TATERUでも :日本経済新聞

 

TATERU(タテル)はこの報道があった同日に、IR情報を発表し、報道の内容が基本的に事実であると認めています。

 

参考:本日の一部報道について

 

この直後、第三者による特別調査委員会の設置を行い、本格的な調査に乗り出しました。

また、9月14日には特別調査委員会による調査とは別で再発防止策の実施を決定しています。

再発防止策の実施が決定されたところまで、約2週間という短期間で素早い対応を行っています。

社内でも混乱は起きていたと考えられますが、経営陣によるスピーディな対応は、従来の不動産業界に新たな風を吹き込んできたTATERU(タテル)ならではの行動力と言えるでしょう。

ここで発表された再発防止策では、5つの対策が発表されています。

 

 

参考:当社従業員による不適切行為に対する再発防止策に関するお知らせ

 

これらの再発防止策は、特別調査委員会の調査報告書でも評価されていました。

 

経営陣の報酬カット・最終責任者の辞任を発表

2018年12月27日に、経営陣の報酬カットと最終責任者の辞任がIRで発表されました。

 

参考:役員報酬の減額及び取締役の辞任に関するお知らせ

 

これは、特別調査委員会からの調査結果を踏まえて経営責任を明確にするために報酬カットを実施しています。

また、当社監査等委員を務めていた取締役からは役員報酬の自主返上もありました。

報酬カットは代表取締役CEOが最も大きい『月額報酬50%を6ヶ月間』となっています。

更に、有価証券報告書によると代表取締役の株保有率は45%で、3995万株を保有しています。(2018年12月31日時点)

データ改ざん発覚前のTATERU(タテル)の株価は一時2,500円前後まで上昇していましたが、現在は200円前後で取引されています。

すなわち、差額となる(2,500円-200円)×3995万株=約919億円の損失も発生しています。

さらに問題のあった営業社員のデータ改ざんにおいて、アパートメント事業の責任者でもあった営業本部長・常務取締役を務めていた人物が辞任したいという申し出があり、会社は受理しています。

報酬カットは不祥事の責任から行ったものですが、この時点で既にアパートメント事業の新規営業活動は停止していたため、少しでも経費を削減するための対策の一つでもあったと考えられるでしょう。

 

株主配当ゼロや優待廃止を発表

元々TATERU(タテル)では株主優待を発行していましたが、2019年12月期は株主優待制度を廃止し、なおかつ株主配当を0円に修正しています。

 

参考:2019 年 12 月期における配当予想の修正(無配)及び株主優待制度の廃止に関するお知らせ

 

株主配当が0円になったことや優待が廃止されたことは、やはり収益状況や業績がいつ回復するか分からないということもあり、この発表につながったと考えられます。

株主配当ゼロや優待廃止は、株主も一定の責任を負っていると言えるでしょう。

収益状況や業績が回復すれば、再び株主配当や優待が戻ってくる可能性もありますが、今のところ具体的にいつ戻ってくるかは分かりません。

 

キャッシュを確保するために奮闘

TATERU(タテル)ではアパートメント事業の新規営業を自粛しているため、収益状況の悪化につながりかねない状況に陥っていました。

しかし、そのような状況でも新規営業を再開させなかったのは、まず現オーナーへの対応を一番に考え、真摯に向き合っていくためなのでしょう。

ただ、それで収益状況が良くなるわけではないため、TATERU(タテル)はキャッシュを確保するために奮闘していました。

例えば、東京・名古屋・大阪・福岡にあった販売不動産122棟・1,092戸分を一括売却する契約を行っています。

 

参考:販売用不動産の売却に関するお知らせ

 

また、現在は既に中止と発表されましたが、TATERU(タテル)の連結子会社である株式会社インベストオンラインの株式譲渡契約が進められていたこともあります。

 

参考:(開示事項の中止)連結子会社の異動(株式譲渡)の合意解除に関するお知らせ

 

このように、キャッシュを確保するために様々な資金繰りを施していたことが分かります。

 

TATERU(タテル)では顧客や従業員、株主などの各種ステークホルダーに対して様々な配慮に講じていました。

最初は経営陣の報酬カットなどで対応していましたが、その後は株主にも一定にも責任を負ってもらっています。

それでも収益状況の改善が見込めなかったため、最終手段として早期退職優遇制度による人員整理が行われていると考えられるでしょう。

 

 

スマートホテル事業やIoT事業で再起することはできるのか?

IoT事業は比較的最近になってから増え始めた事業であり、不動産事業とは無縁の分野でした。

しかし、TATERU(タテル)は元々行っていた不動産事業と共にIoT事業もスタートさせています。

このIoT事業は不動産事業に依存することがない事業なので、万が一不動産事業で躓いてしまっても影響を受けにくくなっています。

そのため、今回の問題が起こった時にもIoT事業はほとんど影響を受けることがなかったのです。

TATERU(タテル)は、これからIoT関係の事業を通じて再起へと向かっていくのか考えてみましょう。

 

IoTを活用した宿泊システムが軌道に乗っている

TATERU(タテル)は、アパート事業をメインとして行ってきた不動産会社です。

しかし最近は、IoTを活用した宿泊システムを取り入れた事業を行い、これまでとは違う側面からアプローチをしています。

TATERU(タテル)が手掛けているIoTを活用した宿泊システムは、「TRIP POD」と呼ばれるものです。

TRIP PODは、最先端のテクノロジーを駆使しながら、宿泊施設の運用をより効率的なものにしようという目的で開発されました。

TRIP PODを活用することで、宿泊の予約や宿泊者の対応といった宿泊施設の運営に欠かすことができない業務をIoTで再構築できるため、インバウンド需要への対応もしやすくなります。

人件費の削減にもつながるため、コストダウンも可能な魅力的なシステムと言えるでしょう。

それだけではなく、スマートホテルの経営をしている中で浮上する不安や疑問などもコンサルタントとチャットでやりとりして相談できるという点もメリットの1つに挙げられます。

TRIP PODのシステムはまだまだ発展途上な部分もありますが、スマートホテルの運用や管理をTATERU(タテル)に一任できるというメリットはオーナーにとってかなり大きなポイントになると考えられます。

TATERU(タテル)が手掛けるTRIP PODの運用実例も徐々に増えています。

TRIP POD HARUYOSHIやTRIP POD YOSHIZUKAなどがその良い例として参考になるでしょう。

福岡県の人気スポットである博多や中洲、天神へのアクセスがしやすい場所にあるTRIP POD HARUYOSHIやTRIP POD YOSHIZUKAは、リーズナブルに宿泊できるとして多くの人が利用しています。

なぜリーズナブルな宿泊費を実現できているのかというと、IoTを活用することで人件費を削減できるからです。

 

2019年第1四半期連結累計期間の売上高は2億600万円(前年同期比より80.8%増加)となっています。

また、営業利益は7,400万円(前年同期比より89.6%増加)となっていることから、IoTやスマートホテル関連の事業は成長性がある事業だと言えるでしょう。

 

参考:四半期報告書-第14期第1四半期(2019年1月1日-2019年3月31日)

 

日本は海外旅行客からも人気が高く来日する外国人は年々増えている状況です。

リーズナブルな料金でインバウンド対策のされたホテルは日本国内外で需要が伸びていくと予想されるので、TATERU(タテル)のIoTを取り入れた宿泊事業は将来性に期待できます。

 

スマートハウスの需要も増加傾向にある

TATERU(タテル)が手掛けるIoT事業の中には、スマートハウス化を進めるために必要なサービスの提供もあります。

これまでの不動産賃貸経営とは全く異なる側面からアプローチする「Apartment kit」は、オーナー、入居者、管理会社の誰が見ても魅力的なシステムです。

新しい賃貸経営のプラットフォームとして、これからの時代を引っ張っていく存在になる可能性も秘めています。

「Apartment kit」は、IoTを活用したスマートな生活を実現するためのサポートを行うもので、オーナーや管理会社の業務効率を高めるためにも役立ちます。

Apartment kit For Property Managementは、不動産管理をよりスマートにするために活用できます。

不動産管理に関するやり取りはどうしても複雑になりがちですが、それを一元化できるため業務効率を最適化できるのです。

業務効率を最適化できるだけではなく、請求関連のミスを防ぐためにもApartment kit For Property Managementは役立ちます。

Apartment kit for Ownerは、賃貸物件を運用するために必要な入居、退去、募集といった業務を効率良く行うために作られました。

入居者の募集フローを簡単にすることやデータをうまく活用した賃貸経営を行うことによって、他者との差別化にもつながります。

オーナーサイドが抱える不安を解消するために、チャットで相談ができるという点もApartment kit for Ownerを活用するメリットだと言えるでしょう。

Apartment kit for Customerは、IoTを活用した賃貸住宅を提供して、今よりも便利な生活を実現するために開発されたシステムです。

賃貸物件だけではなく、新築一戸建てに導入することもできるため、幅広い分野での導入が期待されています。

 

参考:株式会社ロボットホーム

 

TATERU(タテル)はこのように魅力的なサービスの提供を行っています。

これらのサービスから派生した新規事業の開拓も可能です。

TATERU(タテル)は不動産事業に留まることのない事業展開を続け、IoT企業として再起していく可能性が高いと言えるのではないでしょうか?

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