2019年2月13日、TATERU(タテル)において、2018年12月期の最新決算が発表されました。
以前、記事でも取り上げた預金データ改ざん問題で揺れるTATERU(タテル)ですが、今回の問題があり、決算にはどのような影響があったのか。
投資家として、TATERU(タテル)の株に注目してる人も多いことでしょう。
データ改ざん問題については下記で詳しく取り上げていますので、合わせてご確認ください。
今回は最新決算からTATERU(タテル)の今後について考えていきたいと思います。
2018年12月期の決算は、増収減益という結果になりました。
株を保有してるみなさんは、赤字決算にならなかったことに胸を撫で下ろしていることでしょう。
TATERU(タテル)は当初からキャッシュが生まれやすい秀逸なビジネスモデルを採用し、事業の多角化にも注力していました。
このことが、安定した利益と資本の確保に繋がったことで、今回の決算への悪影響を最小限にしたのではないかと予想されます。
しかし、今回の決算で完全に安心することはできません。
TATERU(タテル)の今後の行方はこれからの成長にかかっています。
今回の問題をバネにV字回復を成し遂げることができるのか、詳しく分析していきたいと思います。
・TATERU(タテル)の2018年12月期決算はどうだったのか?
・データ改ざん以降の業績は?倒産の可能性は?
・株価はどう動くのか?今が底値?
・TATERU(タテル)に関する今後の注目ポイント!
TATERU(タテル)の決算内容を詳しく解説
TATERU(タテル)の会社概要
まずはじめに株式会社TATERU(タテル、旧社名:インベスターズクラウド)の簡単な会社概要について確認していきましょう。
社名 | 株式会社TATERU TATERU, Inc. |
本社所在地 | 東京都渋谷区神宮前1-5-8 神宮前タワービルディング 20F / 21F |
設立日 | 2006年1月23日 |
資本金 | 72億72百万円 |
上場証券取引所 | 東京証券取引所 市場第一部(証券コード1435) |
従業員 | 505名(連結ベース/正社員/2018年9月末現在) |
事業内容 | アプリではじめるIoTアパート経営「TATERU Apartment」の開発・運営 不動産投資型クラウドファンディング「TATERU Funding」の企画・運営 |
子会社 | 株式会社 Robot Home(IoT事業) 株式会社 TATERU bnb(民泊事業) 株式会社 TATERU Funding(クラウドファンディング事業) 株式会社 インベストオンライン(アパートプラットフォーム事業) |
※公式サイトより引用:https://corp.tateru.co/company
2006年に福岡で創業したTATERU(タテル)は、当初インベスターズという社名で不動産関連事業を行っていたそうです。
創業当初からITには力を入れていたそうで、SEO対策などを中心に力を入れたことで、アパート販売の収益拡大につなげていったようです。
2008年のリーマン・ブラザーズ破綻に始まるいわゆるリーマン・ショックによって、不動産業界であるTATERU(タテル)も大きな打撃を受けたそうです。
このときに、それまで業界では常識となっていた在庫保有型のビジネスモデルを一から見直し、無在庫型のビジネスモデルを考案したようです。
この無在庫型のビジネスモデルは、現在のTATERU Apartment事業に引き継がれています。
さて、簡単にTATERU(タテル)の会社概要を紹介してきました。
IoT×デザインアパートメントの掛け合わせで、物件に大きな付加価値をもたせる最先端の取り組みを行っていますが、創業当初からITに力を入れてきた会社のようです。
ビジネスモデルが秀逸だったからこそ、今回の預金データ改ざんは会社経営の根幹に関わる問題であり、TATERU(タテル)にとっては重大な問題であると認識する必要があるでしょう。
TATERU(タテル)は今回の問題を踏まえて、第三者委員会を設置し、再発防止策を発表しています。
今回の決算でも触れられましたので、この後詳しく取り上げていきます。
2018年12月期決算短信の内容について
TATERU(タテル)の会社概要はこのくらいにして、次に決算の内容について簡単に見ていきましょう。
注意:本記事に記載する内容は2019年2月13日に発表された決算短信に基づくものです。最新の情報は公式サイトを参照するようにしてください。(https://corp.tateru.co/ir/news)
Qごとの売上高の推移(2015年12月期以降)
まずは売上高についてです。
棒グラフは各四半期における期間別の売上高です。すなわち、四半期の合計が年間の売上高になります。
2018年12月期の売上高は下記のような結果になったとされています。
※括弧内は前年同期比です。「2018年12月期合計」以外は編集部にて計算しています。
対象期間 | 売上高 |
2018年12月期 第1四半期 | 146億7,897万円(32.2%増) |
2018年12月期 第2四半期 | 226億7,317万円(47.7%増) |
2018年12月期 第3四半期 | 134億6,244万円(15.2%減) |
2018年12月期 第4四半期 | 283億3,475万円(14.3%増) |
2018年12月期 合計 | 791億4,933万円(18.1%増) |
預金データ改ざん問題が発覚したのが2018年8月末でしたので、第3四半期の売上が大きく落ちているものの、通期としては20%近くの成長となっているようです。
営業利益と経常利益の比較(昨年対比)
次に、営業利益と経常利益の比較です。
種別 | 2017年12月期 | 2018年12月期 |
営業利益 | 58億98百万円 | 7億21百万円(87.8%減) |
経常利益 | 58億63百万円 | 5億7百万円(91.4%減) |
こちらは棚卸し資産の評価損が大きく影響していそうです。
すなわち、TATERU(タテル)が保有してる在庫が増加し利益を圧迫している可能性が考えられるということです。
TATERU Apartmentにおける成約数の推移(2015年12月期以降)
上記はTATERU Apartmentの成約数の推移です。
赤枠で囲った箇所を見れば分かるように、成約数が減少してるので、こちらが大きく影響してると考えられます。
2018年12月期の決算では、最終的に増収減益となりました。
これまで増収増益を続けてきたTATERU(タテル)にとっては、辛い決算になったことでしょう。
一方で、今回のような大きな問題があったのにも関わらず赤字決算にならなかったことはTATERU(タテル)のビジネスモデルが秀逸だったからと言えるでしょう。
そして、その黒字決算の要因はTATERU(タテル)の多角化戦略にあるということが決算書を読んでいくと分かります。
TATERU(タテル)のビジネスモデルについては下記にまとめてます。
各事業の営業成績(新規事業は軒並み増収増益)
次に、TATERU(タテル)の主力4事業のセグメント別の営業成績を見ていきましょう。
持株会社体制への移行について
TATERU(タテル)は将来的に持株会社体制へ移行することを発表しています。現在は2020年1月1日に移行する予定となっています。
従来TATERU Apartment事業のみを報告セグメントとしておりましたが、当連結会計年度より、報告セグメントをTATERU Apartment事業、TATERU Funding事業、TATERU bnb事業、Robot Home事業の4つに変更しております。
※引用元:TATERU決算短信
各事業ごとの売上高と営業利益
今回の決算から報告セグメントを4事業に分けて発表することになったようです。
報告セグメント | 売上高 | 営業利益 |
TATERU Apartment事業 | 765億97百万円(16.4%増) | 22億99百万円(71.6%減) |
TATERU Funding事業 | 7億70百万円(67百万円) | 3億81百万円(△25百万円) |
TATERU bnb事業 | 5億44百万円(263.9%増) | 1億17百万円(△59百万円) |
Robot Home事業 | 13億17百万円(52百万円) | 5億20百万円(△2億24百万円) |
※括弧内は前年対比、決算短信より引用。△は赤字。
TATERU Apartment事業は増収減益となっていますが、それ以外の新規3事業については黒字化に成功しているようです。
特にRobot Home事業の伸びが注目され、5億円の営業利益を生み出す事業に成長しています。
あくまで仮の話ですが、もしTATERU(タテル)がTATERU Apartment事業しか注力していなかったら、今回の問題で確実に赤字決算になっていたことでしょう。
事業の多角化戦略が不幸中の幸いだったと言えます。
今後は安定的に新規事業を成長させつつ、TATERU Apartmentの立て直しに注力していく必要がありそうです。
決算報告でも触れられた「再発防止策の徹底」について
今回の決算報告では、改めて再発防止策の徹底についても触れられておりました。
不動産業界ではここ直近での不祥事が目立っています。正直、業界全体に対する悪いイメージというものが付いてしまっているでしょう。
しかし、一部の人たちが主張するようなスルガ銀行・かぼちゃの馬車に関する問題とは全く性質が異なります。
また、レオパレスなどで問題になってるような建物に関する不備があるわけでもないです。
ただ正直、一般の人から見れば混同してしまうのも無理はないでしょう。
今回の問題の本質については下記の記事に詳しくまとめていますので、気になる方は一度読んでみてください。
①業務フローの変更について
業務フローの変更については、「顧客管理本部 事務課」を新設しています。
これにより、融資審査の資料の授受について営業部を介さずに行うことになるため、独立性が担保されました。
②コンプライアンス体制について
また、コンプライアンスについてはコンプライアンス統括本部を設置し、これまでのコンプライアンス遵守体制を抜本的に見直したようです。
特に、統括本部長が設置されたことによって責任が明確になったと言えるでしょう。
TATERU(タテル)の事業に成長性はあるのか
さて、ここまで記事を読んでくださった読者の皆さんの中で勘の鋭い方はもうお気づきでしょう。
TATERU(タテル)の今後の成長性は、既存事業の立て直しと新規事業の成長にかかってると分析できます。
既存事業の立て直しについては、企業として発表してる再発防止策を確実に履行してもらうことです。
TATERU Apartment(タテルアパートメント)の業績
ビジネスモデルは高く評価されているのが、TATERU Apartmentですので、社会的信用を取り戻し、顧客が徐々に増えていけば回復基調に乗ることでしょう。
そのため、この事業の悪化による倒産の可能性は低そうです。
また、今回の再発防止策によって、資本力のない顧客はこれまでのように簡単に審査が通るようなことはなくなります。
これによってTATERU Apartmentが抱える事業リスクも軽減されることになるでしょう。
TATERU Apartmentオーナーの年収帯について
一方で、TATERU Apartmentオーナーのポジションマップを確認してみると、40代で年収700万円の会社員・公務員がほとんどを占めています。
今回の調査結果報告でも明らかになってますが、預金データ改ざんは全ての契約において行われていたわけではなく、あくまで一部です。
このポジションマップを見る限り、低所得の方が占める割合は少ないため、今回の預金データ改ざんが致命的なダメージを与えることはなさそうです。
TATERU Funding(タテルファンディング)の業績
次にTATERU Funding(タテルファンディング)についても見ていきましょう。
TATERU Fundingはスマホのアプリから1口1万円で始められる手軽な不動産投資です。
いわゆるクラウドファンディングという形態を取っており、複数の出資者から集めたお金をTATERU Fundingが運用するという形です。
運用利回りは年3~5%となっており、募集ファンドには人気が集まっていました。
預金データ改ざん問題を受け、2018年10月移行はファンドの募集を停止しており、募集総額の伸びはありませんが、再びファンドが動き始めれば順調に成長していくことでしょう。
TATERU bnb(タテルビーアンドビー)の業績
続いてTATERU bnb(タテルビーアンドビー)についてです。
IoT技術を活用した民泊のマッチングプラットフォームを提供してるTATERU bnbはTATERU ApartmentとRobot Homeで培ったIoTのノウハウを民泊事業に活かしています。
IoT技術を応用することで、民泊事業を営むオーナーは事業運営に関する様々な業務を簡潔にすることができ、宿泊者はIoT技術を利用して、より便利に宿泊施設を利用できるようになります。
今後増えていく外国人観光客をターゲットとしたTRIP PHONEなども注目を集めており、時代のニーズをキャッチした事業として今後も発展が期待できるでしょう。
Robot Home(ロボットホーム)の業績
最後に、Robot Home事業について見ていきましょう。
Robot Homeは各事業で利用されてるIoT技術の開発を担っています。
TATERUの強みであるリアルエステートテック事業はこのRobot Homeが支えていることになります。
Robot Homeは世界中のビジネスリーダーが集まる電子機器見本市、CES2019(Consumer Electronics Show)に出展しています。
公式発表では5万5千人以上が訪れる見込みだとされており、Robot Homeのグローバル展開にも注目していかなければいけないでしょう。
※参考:CES2019 公式サイト
Robot Homeの詳しいビジネスモデルについては下記にまとめてます。
TATERU(タテル)決算報告後の株価推移など
ここまでTATERU(タテル)の2018年12月期決算短信について見てきました。
繰り返しますが、今後の成長において重要になるのは、既存事業の立て直しと新規事業のさらなる成長です。
既存事業の立て直しについては、第三者の調査委員会が一定の支持を表明した、再発防止策の徹底が求められます。
新規事業のさらなる成長のためには、創業以来注力してきたITを活かしたリアルエステートテック企業を極めていくことです。
不動産業界は長く古い慣習が続いている業界として有名です。
IoTという最先端技術を取り入れて、業界革命を進めることができれば大きな先行者利益を得られることでしょう。
その意味においては、事業としての方向性は間違っておらず、今後も軸をぶらすことなく取り組んでいって欲しいところです。
預金データ改ざん問題以降のTATERU(タテル)株価推移
TATERU(タテル)の株価は預金データ改ざん問題発覚以降、大きく下落しています。
2017年12月期の株価が2,000円を超えていたのに対し、現在は300円前後で取引されています。
これだけの問題があってもなお、黒字決算を続ける企業に対して市場の目はやや冷ややかだという印象を受けます。
問題が落ち着いたタイミングで値を戻し、いずれ株価も上昇傾向になることでしょう。
今後の記事では、そのタイミングについても考えていきたいと思いますのでお楽しみに。
預金データ改ざん問題に対する再発防止策
また、TATERU(タテル)は今回の問題について、下記のような再発防止策を発表しています。
主な再発防止策
業務フローの変更 | 営業社員とは独立した部署に「事務課」を新設。融資関係資料の顧客からの受領及び金融機関への提出は事務課においてのみ実施。 |
契約適合性手続きの厳格化 | 顧客の売買等の契約適合性を確認する手続きを厳格化。新設する事務課で、顧客の預金通帳等の残高データの原本を確認。 |
業務モニタリング | 内部監査室によるモニタリング(抜き打ち検査)を行う。 |
コンプライアンス遵守体制の見直し | コンプライアンスを重視する明確なトップメッセージを継続的に発信。教育・研修体制の強化・見直しを実施。 |
内部通報制度の充実 | 内部通報制度の存在及びその意義を全役職員に周知。関係者用のコンプライアンスラインを開設。 |
上記のような再発防止策を確実に履行することで、より高いコンプライアンス意識を持ち、企業の適切な成長に取り組んで行くことを期待したいと思います。
他の不動産業界で発生してる不祥事とはことなって、今回のケースは会社全体で組織的に行われたものではないということです。
トップがしっかりと従業員にメッセージを発信していくことによって、企業体質を改善することは不可能ではないと考えます。
TATERU(タテル)の今後の値動き注目ポイント
次のIR発表は3月の定時株主総会になるのではないかと予想されます。
預金データ改ざん問題については、第三者委員会の調査が完了し、再発防止策にも一定の評価が得られたことから一旦不安材料は出し尽くしたといえます。
次の株主総会において、事業の成長ビジョンを提示できるか、それに対して市場がどのような反応を示すのかが注目されます。
今後も、TATERU(タテル)に関するニュースがあれば詳しく解説していきますので、ぜひ楽しみにしていてください。